2011年12月31日土曜日

抗がん剤が体内で生成される新薬

新しいがん治療法、米国で臨床試験へ

 信大医学部(松本市)内に研究所を置くベンチャー企業「アネロファーマ・サイエンス」(東京)は来春にも、ビフィズス菌を利用したがん治療法の臨床試験を米国で始める。がん組織は酸素の少ない「嫌気的環境」にあるため、嫌気的環境を好むビフィズス菌を薬の「運び屋」として利用。併せてがん組織の内部で抗がん剤を生成する仕組みにすることで正常な組織への影響を抑え、副作用が少ないがん治療法の確立を目指す。
 同社が実用化に取り組んでいる治療法は、抗がん剤になる前段階の物質「5―FC」と、5―FCを抗がん剤「5―FU」に変える酵素を作る遺伝子を組み込んだビフィズス菌「APS001F」を患者に投与。ビフィズス菌が集まるがん組織の内部で抗がん剤に転換し、ピンポイントでがん組織を攻撃する。
 臨床試験は米国中南部にあるがん専門病院で実施。まず第1段階の試験で、がんの種類を絞らずに、胃がんや大腸がんなどさまざまな固形がんを対象に行う。2年ほど実施した後、続く第2段階の試験で、第1段階で特に効果が高かったがんの種類に絞って投与。両試験で計40~60人の患者に実施する予定だ。
 同社はこれまで動物実験で有効性や安全性を確認。臨床試験については米国立衛生研究所や米食品医薬品局と打ち合わせを重ね、それを基に1月中に米食品医薬品局に実施を申請する。順調に進めば、春ころに1人目の患者に投与できる見込みだ。
 同社取締役で信大大学院医学系研究科の谷口俊一郎教授=分子腫瘍学=は「がんの種類によって、ビフィズス菌が集まりやすいものと、集まりにくいものがあるかもしれないので、臨床試験を通して見極めたい」と説明。「がん組織という局所だけで大量に5―FUを作ることができるため、副作用を減らすだけでなく、従来は5―FUが効かなかった種類のがんにも効果があるかもしれない」と期待する。
 臨床試験が順調に進めば、5―FUだけでなく別のさまざまな薬を運ぶ手法としても注目されそうだ。
 同社の三嶋徹也社長は「今までにないまったく新しいコンセプトの治療法を是非、世に出したい」と話している。

2011年12月31日 信濃毎日新聞

2011年12月27日火曜日

免疫機能が活性化する菌

アクネ菌に皮膚がん抑制効果 三重大院講師ら確認

ニキビの原因となるアクネ菌が、皮膚がんの一種で転移の早い「悪性黒色腫」の抑制に役立つことを、三重大大学院医学系研究科の山中恵一講師らのグループがマウスを使った実験で明らかにした。米科学誌「プロスワン」電子版に22日、掲載された。

グループは、白血球内の免疫細胞の中に、アクネ菌と腫瘍に反応する細胞がある点に着目。悪性黒色腫を移植したマウスの患部に菌を直接注射したところ、周辺組織の免疫機能が活性化し、アクネ菌とともに腫瘍のがん細胞も排除し始めた。

  アクネ菌を1カ月間で2回注射したマウスは、注射していないマウスに比べて腫瘍の成長が半分にとどまり、がん細胞も大幅に減っていた。山中講師は「今後はアクネ菌のうち、どの成分が効果的なのかを解析し、新薬の開発につなげたい」と説明している。

2011年12月22日 中日新聞

がん治療に海外治験中の新薬を活用

未承認薬、条件つき容認へ 重病患者を対象、厚労省方針

 厚生労働省は、ほかに治療法がない重い病気の患者に対し、国内では承認されていない薬を一定の条件で使えるように制度化する方針を固めた。26日夜、薬事行政の見直しを検討している厚労省の審議会で大筋了承された。同様の制度は欧米にあり、がん患者らが要望していた。

 日本は欧米に比べて薬の承認時期が遅れるため、欧米で受けられる最新の治療を受けられないことがある。医師や患者が海外の薬を個人輸入して使っている例もあるが、偽造薬を買わされる危険性や、副作用が起きたときに対応ができるのか、などの問題がある。

 創設する制度では、欧米で承認済みで、国内で承認を得るための臨床試験(治験)が始まっている薬を対象とする。医療機関が厚労省に必要な届け出をすれば、複数の病気を抱えているなど治験に参加できない患者に、この薬を使えるようにする。患者にとっては治療の選択肢が広がることになる。

2011年12月27日 朝日新聞

2011年12月21日水曜日

簡単がん検査の精度と目的

がん検査は簡単便利になるほど受信する人数の増加が見込めるために、がんの早期発見に寄与できるという理屈だ。がんの最良の治療法が、早期発見早期治療であるkとは誰もが知っているのに、早期発見のためのがん検診を面倒がるという矛盾。
実用化前のためにがん検診ではなく「スクリーニング」、つまりがん発病が疑われる患者をふるいに掛ける程度の精度のようだが、唾液だけでがんの簡易検査ができることは間接的に多くの患者を救うことになる。


末期がんになる前に全てのがん患者を発見できれば、末期がんは無くなってしまうのかもしれない。


2011年12月21日 ZAKZAK

唾液から“がん”が発見できる時代へ!
 人の唾液を調べて、健康・医療に役立てる研究が進んでいる。最近では、前立腺がんの腫瘍マーカー(血液検査)であるPSA(前立腺特異抗原)検査が唾液でも行えることが報告された。唾液でどこまでわかるのか。唾液検査の現状について専門家に聞いた。
 ■血液と唾液の関係
 PSAは唾液中にも含まれ、前立腺がん手術後の再発・転移を調べるのにも有効だとの研究結果をまとめたのは、神奈川歯科大学の槻木恵一教授(唾液腺健康医学)らのグループだ。
 研究によると、前立腺がん患者31人を調べ、再発や転移が見つかった11人はPSAの血中濃度が高い上に、血中濃度が上がるにつれ唾液中の濃度も上がっていた。再発・転移のない20人は血中濃度が低く、唾液中にもほとんど含まれていなかったという。
 現在、唾液用の検査キットを開発中で、今年度中にはさらに大規模研究がスタートする運びだ。
 ■偽陰性なく十分有効
 PSAは前立腺から分泌される物質で、がん以外でも前立腺に病気があると血中濃度が高くなる。
 では、なぜ唾液中にもPSAが現れるのか。
 槻木教授は「唾液は血液から作られていて、血液成分を反映するからです」と話し、唾液検査の精度をこう説明する。
 「欠点をいえば、口腔内の細菌や病変に影響を受ける場合があり、さらに唾液は血液より濃度の幅が大きい。ただし、PSA唾液検査では、偽陽性の可能性はあっても偽陰性はなく、スクリーニングに十分有効です」
 とくに大きな利点は「痛くない、簡単、誰でも採取できる」ところだ。
 ■唾液に有望な将来性
 槻木教授は「最も大切な成果は、すでに広く使われている腫瘍マーカーが、唾液検査に応用できることが分かったこと。早く実用化に取りかかれるのです」と話す。
 これまでも唾液でがんを発見する研究はあったが、新しいマーカーを見つけることに重点が置かれているため、実用化にはまだ時間がかかる。たとえば、慶応大では唾液から、すい臓がん、乳がん、口腔がんを見つけるための新しいマーカーの開発が進められている。
 唾液腺と全身の関係や唾液中の無数の成分には解明されていないことが多く、今後も唾液腺関連研究の進展次第では、まだ多くの検査や病気予防への応用の将来性が秘められているという。
 槻木教授は、現在取り組む有望な研究テーマの概要をこう話す。
 「唾液には多数の抗菌物質が含まれ、この量の違いが、唾液の質の差となり健康のバロメーターになる。また、舌下部からある唾液成分が血液に再吸収されているが、その成分の働きが全身の健康に大きく関与していることに注目しています」
 今後の唾液研究に大いに期待したいところだ。
■唾液からわかる主な検査項目
○虫歯のなりやすさ
○歯周病の状態
○HIVウイルスの有無
○ストレスの測定
○喫煙習慣
○大麻や覚醒剤の使用の有無
△乳がん・前立腺がんのスクリーニング
△生体の活性度(免疫力)
△疲労度(ウイルスの量)
△妊娠しているかどうか
△性病関連の検査
△環境汚染の程度(環境ホルモンの量)
※○は検査が確立・実用化されている。
 △は研究中で今後の実用化が可能

2011年12月19日月曜日

狙ったがん細胞だけに放射線の肺がん治療

がんを狙い打つ放射線治療
肺がん治療に用いられる放射線治療の問題は、副作用と効果のバランスが悪いことだ。放射線が目標となるがん細胞だけに照射されてがん細胞だけが死滅させられるのが理想だが、実際にはがん細胞だけでなく、周囲の正常な細胞にも放射線が当たってしまう。そのために吐き気、嘔吐、虚脱感、抜け毛などの副作用が引き起こされていた。さらに肺がんへの放射線治療を困難にしているのは、呼吸によって肺が動き、放射線治療の対象となる肺がん患部も動いてしまうことだった。そのため、肺がんへの放射線治療は正常細胞をも痛めてしまう治療例が後を絶たなかったのだ。
要するに正常細胞には放射線を当てず、狙ったがん細胞だけに放射線を当てれば良いだが、これが従来のがん治療機器では不可能だったのである。
しかし、近年の最新のがん放射線治療機器に機能された自動追尾装置ならば、がんの病巣を呼吸に合わせて追尾しながら、がん細胞だけにピンポイントで放射線を照射できる手法が確立された。
従来ならば、呼吸に伴って肺がん患部が揺れ動くために、放射線を照射する対象の病巣部を正確にリアルタイムで捉えることが不可能だったが、最新鋭の機器ならば正常な臓器や組織への放射線量を少なくすることができ、副作用の軽減が期待できるのだ。がん患部への照射と、エックス線で透視した画像処理を並行することで、がん病巣の位置を常に把握できる。治療中から照射ヘッドの向きを変えることで、動くがん病巣への放射線照射をリアルタイムで追尾可能になった。
従来の放射線治療法と比べると、がん病巣への同じ放射線量を照射しつつ、正常な肺への放射線量は2割減となった。治療時間は1回30分程度で、公的医療保険が適用されることが特筆される。
現在のところ世界中でも、京都大病院と神戸市の先端医療センター病院だけが、この最新機器でのがん治療を実施している。

子宮筋腫と子宮肉腫を容易に見分ける新手法

PET使い子宮筋腫・肉腫を判別

近年に女性の晩婚化や少子化が原因で増えているとされる子宮筋腫は、子宮肉腫や子宮がんへの変異が心配されることが多い。

従来、子宮筋腫と子宮肉腫を見分ける診断は難しいものだった。しかし、陽電子放射断層撮影(PET)を利用することで、患者の負担は最小でも9割以上の高い精度でがん診断することができるようになった。

この「PET診断法」は、福井大産科婦人科の吉田好雄准教授と福井大高エネルギー医学研究センターの岡沢秀彦教授が開発した手法で、米国核医学学会「がん・腫瘍(しゅよう)診断部門」では「最高賞」を獲得している。

2011年12月16日金曜日

乳がんに新薬抗がん剤

 

抗がん剤「ハラヴェン」がカナダで承認

乳がん、それも再発・転移乳がんに対する新薬が、カナダ保健省から承認を取得した。
乳がん新薬の名称は、抗がん剤「ハラヴェン」。

「ハラヴェン」は、2010年3月に日本、米国、欧州で同時申請を行い、世界で初めて2010年11月に米国で抗がん剤としての承認を取得した。2011年12月時点では、今回のカナダを含め、シンガポール、欧州、日本、スイスなど世界35カ国で承認されている抗がん剤である。

がん患者が痛みに耐えていた時代

がん患者が痛みに耐えていたのは前時代の治療状態だ。
現代のがん治療は、QOL(生の質)を最優先に、痛みを和らげることに主眼を置く。がんの疼痛緩和に対して、積極的に医療用麻薬=モルヒネを利用することも非常に有効なのである。
がん患者の痛みの緩和ケアには麻薬だけでなく、「ハンドマッサージ」も有効であり病棟での実施も拡がり、各地で講習会も盛んになりつつある。
がんの痛みのケアのためには、オイルを塗ったがん患者の手の甲や指先を「相手を思いやりながらゆっくりと」もみほぐすことが大事なのだ。
がん患者や家族がマッサージを憶えることで、がん患者の闘病に寄与できるのである。

2011年12月15日木曜日

脂肪肝から肝がんへの高リスク

高リスクで肝癌に進展する「非アルコール性脂肪肝炎」とは
肝硬変や肝がんは、B型やC型肝炎ウイルス感染、アルコールの過剰摂取が原因といわれている。近年肥満や糖尿病、高血圧などの生活習慣病を高頻度に合併した脂肪肝で、炎症や線維化を伴う非アルコール性脂肪肝炎(NASH)による肝硬変、肝がんでの死亡が増加している。健康診断で脂肪肝と診断され、年々肝臓の数値が悪化している場合は専門医による早期の受診が不可欠だ。
健康診断で脂肪肝を指摘されても、症状もないため放置することが多い。しかし、肝硬変や肝がんのリスクが高い脂肪肝もある。
従来、肝硬変や肝がんの原因は、B型、C型肝炎ウイルスの感染や過剰なアルコール摂取が主だった。ところが近年、ウイルスに感染しておらず、アルコール摂取もない非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の中で、炎症や線維化を伴う非アルコール性脂肪肝炎(NASH)からの肝硬変・肝がんが増加している。NASHの多くは肥満や糖尿病、高血圧などの生活習慣病を合併しており、ウイルス性やアルコール性肝炎よりも予後が悪い場合がある。
大阪府済生会吹田病院の岡上武院長に話を聞いた。
「NAFLDは現在約1000万人いるといわれ、予後が比較的良好な単純性脂肪肝と、予後が悪いNASHに分かれます。NAFLDのうち20~30%がNASHと推計され、NASHは10年以内に10~30%が肝硬変や肝がんに進展します」
2011年12月15日 週刊ポスト

2011年12月14日水曜日

腫瘍が80%縮小の新薬、すい臓がんワクチン

免疫系を「訓練」、画期的な乳がんワクチンを開発 米研究
乳がん、大腸がん、卵巣がん、すい臓がんの治療に有効と見られる画期的な仕組みのワクチンを開発し、マウスの実験で腫瘍を大幅に縮小できたとする論文が、12日の米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences、PNAS)に発表された。
 ワクチンを開発したのは、米ジョージア大学(University of Georgia)がんセンターのヘルトヤン・ブーンズ(Geert-Jan Boons)教授と米メイヨークリニック(Mayo Clinic)のサンドラ・ジェンドラー(Sandra Gendler)教授のチーム。細胞表面にMUC1たんぱく質が付着している腫瘍を見つけ出して殺すよう、免疫系を訓練するというもので、こうした仕組みを持つワクチンは世界初だという。
 MUC1は乳がん、すい臓がん、卵巣がん、多発性骨髄腫など、悪性で致死率も高いタイプのがんの70%以上で見られる糖たんぱく質。タモキシフェン、アロマターゼ阻害薬、ハーセプチンなどの抗ホルモン剤が効かないいわゆるトリプルネガティブ乳がん患者の90%で過剰発現することでも知られる。
 マウスにこのワクチンを投与してみたところ、免疫系の3つの構成要素すべてが活性化され、腫瘍が平均で80%も縮小した。
マウスでの実験結果が人間には当てはまらないというケースは多いが、研究チームは、極めて強い免疫反応を示し独特の仕組みを持つこのワクチンに大きな期待を寄せており、ワクチンの安全性を確認するフェーズ1の臨床試験を2013年中にも開始したい考えだ。
 なお、このワクチンは化学療法との併用が可能で、特定のがんに対する予防効果もあるという。
2011年12月13日 AFP

2011年12月13日火曜日

がん患者データベース

がん患者、データベース化 市区町村や年齢・部位別に
 東京都は都内の病院からがん患者の情報を収集し、2015年をめどにデータベースを作る。まず約5万件のデータをまとめ、がんにかかった人の割合を市区町村別、年齢別、部位別に集計する。都内でがんによる死亡者は年間3万人以上にのぼる。きめ細かく実態を把握・公表することで、市区町村に検診の拡充などがん対策にいかしてもらう。
 国の指針に基づく事業で、すでに多くの県で実施している。都内では病院が多いこともあり、都は手掛けていなかった。 都立駒込病院(文京区)に登録室を設け、7月から順次、医療機関に情報提供してもらう。来年1月以降、病院にかかった都内在住の患者が対象で、がんの部位、発見の経緯(検診、人間ドックなど)、放射線治療の有無など25項目を登録する。個人情報保護法の適用外で患者の同意は不要という。すでに約150病院に協力を呼び掛けた。
 同じ人が複数の病院で受診しているケースもあるため、重複の確認作業などに時間がかかり、12年の結果が出るのに3年程度かかるという。当初はがんによる年間死亡者の1.5倍の約5万件、最終的には同2倍の6万件の収集を目指す。
 この情報をもとに、市区町村別にがんにかかった人の割合を体の部位や年齢別などに分けて集計する。これを市区町村のがん対策にいかしてもらう。荒川区は一定年齢以上の区民が胃、肺、大腸、乳がん、子宮頸(けい)がんの定期検診を無料で受けられるようにしているなど、市町村で検診の内容が異なる。データが整備されれば、例えば、肺がんの人の割合が高い地域では、肺がんの検診を拡充するなどの政策も可能になる。
 血液のがんの一種である成人T細胞白血病(ATL)の割合が高い長崎県では国に先立ち、妊娠後の検査を自己負担なしで受けられるようにしてきた。大阪府では病院ごとに部位別の治療人数と5年後の生存率を公表し、病院選びの参考にしてもらっている。
 またがん患者の割合を公表することで、がん検診の受診率を高める狙いもある。現在、都内のがん検診の受診率は35%前後で50%に高める目標。
2011年12月13日 日本経済新聞

2011年12月10日土曜日

肺がん後は脳卒中に注意!

肺がん診断後1~2年は脳卒中の発症率が高い―台湾研究

 喫煙率の低下により近年は全体的に患者数が減少しているものの、依然としてがんによる死亡の最多を占めている肺がん。喫煙と深い関係にあり、近年は女性患者の増加が懸念されている。こうした中、肺がん診断後1~2年は脳卒中の発症リスクが高いと、台湾・中国医薬大学のPei- Chun Chen氏らが、米医学誌「Stroke」(2011; 42:3034-3039)に発表した。

15万人を追跡調査

 脳卒中は肺がん患者の脳血管合併症とされているが、がんのない人と比べ脳卒中のリスクが高いかどうかは明らかではない。Chen氏らは、国民健康保険のデータから抽出した1999~07年の新規肺がん患者5万2,089人と、がんのない対照者10万4,178人との間で、08年までの脳卒中の発症を比較した。

 その結果、肺がん群の脳卒中発症率は対照群と比べて1.5倍高かった(1,000人当たり年間25.9人、同17.4人)。対照群と比較した肺がん患者の脳卒中全体のリスクは1.47倍、脳出血に限定すると1.78倍、脳梗塞では1.43倍だった。なお、脳卒中リスクは、男性では追跡1年後、女性では追跡2年後に低下したという。

2011年12月9日 

2011年12月8日木曜日

35%ですい臓がんが消失、縮小する新薬

樹状細胞で膵臓がん治療
35%で縮小や安定 ノーベル賞で注目
受賞者の死亡が発表後に判明し話題となった今年のノーベル医学生理学賞。話題の主のラルフ・スタインマン米ロックフェラー大教授は、免疫で重要な働きをする「樹状細胞」を発見した功績が評価された。しかも自身が膵臓がんを患い、樹状細胞を使った治療で4年半の闘病生活を送っていた。樹状細胞による膵臓がん治療は日本でも行われており、最近、治療成績をまとめた論文が発表された。患者の約35%でがんが消失または縮小、安定し、「有効な治療となりうる」としている。
▽司令官と兵隊
 樹状細胞はリンパ節などに存在する免疫細胞の一種で、木の枝のような突起にちなんでこの名が付けられた。がんや病原体を取り込み、その特徴を目印として、兵隊であるリンパ球に示す司令官の役割を担う。
 がん免疫療法の専門医療機関であるセレンクリニック東京 (東京都港区)では、まず、樹状細胞に育つ細胞を成分採血で患者から取り出す。培養する過程で、がんの目印であるがん抗原を取り込ませ、患者に戻すことでリンパ球にがんを攻撃させる「樹状細胞ワクチン療法」を実施している。 細胞の採取に2~3時間、培養に約2週間かかる。作製した樹状細胞ワクチンを2週間に1度の割で5~7回、3~4カ月にわたって注射する。
同クリニックは、抗がん剤や放射線治療などの標準的な治療で効果がなかった進行した膵臓がんの患者49人を対象に、以前からの抗がん剤治療に加えて樹状細胞ワクチン療法を実施、7月に治療成績を米国の膵臓学会誌に発表した。
975日生存
 それによると、4週間以上にわたって、がんが消失した状態が続いた患者が2人、がんの大きさが30%以上縮小した患者が5人、がんが大きくならず安定した患者が10人で、計35%でがんが制御できたと判断された。
 ワクチン投与を始めてからの平均生存期間は少なくとも360日で、1年以上生存している患者も10人に上った。最も進行度の高いステージ4bと呼ばれる状態で治療を始め、975日延命した63歳男性の例もあった。
 同クリニックの高橋秀徳院長は「進行した膵臓がんは、通常の治療では診断から1年以上延命できればいい方だとされている。ノーベル賞の受賞は、樹状細胞ワクチン療法への世界的な期待の表れではないか」と話す。
 今回の治療で新たに分かったこともある。樹状細胞ワクチン療法に、活性化リンパ球療法を併用すると、併用しない場合に比べて平均生存期間が229日から396日に大幅に延びたのだ。
17機関で実施
 活性化リンパ球療法は、患者の血液を採取し、リンパ球を増やしてから患者に戻す方法。がん細胞に対する直接的な攻撃力を高めることを狙った治療法としてかつて注目を集めたが、その後の国内外の検証で有効性が示されなかったという。
併用療法について高橋院長は「優秀な司令官が入ることで、増やした兵隊がより効果的に働くようになったのかもしれない。効果はさらなる検証が必要だ」と話す。
 米国では食品医薬品局(FDA)が2010年4月に前立腺がんに対する樹状細胞ワクチン療法を承認したが、日本では未承認。バイオベンチャー「テラ 」(東京都千代田区)は、世界で最も優先度が高いと米国などの専門家が評価したがん抗原「WT1」を使った樹状細胞ワクチン療法の開発を進め、セレンクリニック東京や大学病院を含む全国17の医療機関で実施している。治療費約170万~230万円は自己負担となる。
2011年12月6日 47News

膵臓がん早期発見する微妙な症状

【これで私は助かった!】腹痛から“膵臓がん”見つかり命拾い
見つかったときには手遅れだった-。がんの中でもこのケースが非常に多いのが「膵臓(すいぞう)がん」だ。早期発見の難しさはトップクラス。生還が最も難しい病気なのだが…。
■浜岡祥司さん(54歳=仮名)のケース
膵臓がんが助かりにくいということは知っていました。だから自分が膵臓がんだと分かったときは観念しました。はっきり言って諦めていましたよ。
きっかけは腹痛。それも「なんとなく痛い」という不快感に近いもの。胃薬を飲んでも効かず、酒の飲み過ぎだと思っていたんです。以前は会社でも一、二を争う大酒飲みでしたから。
それでも1カ月も症状が続くと不安になってきて、そこでようやく病院を受診。症状を話すと胃カメラと超音波検査を受けることになりました。
胃カメラでは異常はなかったものの、超音波の画像で膵管の微妙な広がりが写っていた。精密検査に進んで、CTとMRI検査の結果は「ステージ2の膵臓がん」。膵頭部に直径1センチほどのがんがあったのです。こんな僅かな病変からがんが見つかるとは驚きました。
すぐに入院して、膵頭部と十二指腸を切除する手術が行われ、トータル1カ月ほどで退院。その後もがんが取り切れていない場合を想定して1年間の抗がん剤治療を受けました。
抗がん剤の副作用は多少出たものの、副作用を止める薬を一緒に服用していたので、想像していたよりは軽く済みました。
抗がん剤治療が終わってからも、定期的に検査は受けていますが、5年半が過ぎた今も転移や再発はナシ。医師の指示に従って、お酒はやめました。膵臓がんになって助かっただけでも命拾いなのに、それをみすみす捨てるようなことはできませんからね。
■専門医はこう見る
膵臓がんが助かりにくいがんなのは事実です。よく「膵臓がんは背中が痛くなる」と言いますが、これはがんが脊椎の神経に浸潤して起きる症状。「黄疸(おうだん)」も同様で、膵がんに伴う自覚症状の多くは、がんがかなり進行していることを示唆します。
早期で手がかりとなる症状というと、浜岡さんのような「上腹部の痛み」が挙げられますが、これも必ず出るわけではありません。つまり、自覚症状をアテにしていたのでは、なかなか完治は期待できないがんなのです。
浜岡さんは「幸運」が重なったケースといえます。超音波画像の微妙な病変に気付いたのは医師や検査技師の技術が高かったから。この時点でがんが、一般的に「助かる見込みがある」とされる1センチ以下だったこともラッキーでした。
オマケに膵臓がんの手術は食道がんと並んで難易度の高い手術。執刀する外科医には高い技術が求められます。その意味では、病院選びも重要なテーマとなります。
こうした難関をクリアして初めて克服できる可能性が出てくる-というのが膵がんなのです。
ただし、ハイリスクな人はいます。喫煙者、飲酒量の多い人、糖尿病の人-。特に中高年になって初めて糖尿病を指摘された人は要注意。これらに当てはまる人は、日頃から微妙な症状に注意して、年に一度の健診やドックを欠かさないことが重要です。
2011年12月7日 47News

2011年12月6日火曜日

応用範囲の広い がん新薬

がん細胞:増殖を半減させる酵素特定 東大チーム

がん細胞の増殖速度を半分に抑える酵素を、東京大先端科学技術研究センターの児玉龍彦教授と大沢毅・特任助教(システム生物医学)らのチームが特定した。この酵素は、ほとんどのがん細胞にあり、応用範囲の広い新薬になる可能性がある。米科学アカデミー紀要電子版に発表した。

がん細胞は、正常細胞に比べて、低酸素や低栄養状態になりやすく、新しい血管を作って、栄養を確保している。

 チームは、人やマウスのがん細胞の栄養状態をさらに悪化させて、細胞内の成分を調べた。その結果、「ヒストン脱メチル化酵素」と呼ばれる酵素が生じていることを突きとめた。

 その上で、子宮(頸、けい)がんや皮膚がんなどさまざまながん細胞にこの酵素を注入し、マウスの皮下に移植した。すると、この酵素が血管の伸びを鈍らせたため、酵素を加えた細胞は、酵素なしのがん細胞に比べ、増殖の速さが半分から5分の1に抑えられた。

 大沢さんは「がん細胞の中で、この酵素の働きを高める技術を開発したい」と話す。

 2011年12月6日 毎日新聞

2011年12月2日金曜日

肝臓がん、乳がん、脳腫瘍の新治療機器

超音波治療装置の適用範囲、がんの疼痛緩和やがん治療に拡大へ
米GE Healthcare社は、主に子宮筋腫の治療に使われている同社のMRガイド下集束超音波治療装置「ExAblate」シリーズの治療対象を、がんの疼痛緩和や治療などへ広げていく。
既に、がんの骨転移患者の疼痛緩和への適用認可を米国FDAに申請済みであり、2012年にも承認される見通し。今後は、乳がん肝臓がん、脳腫瘍などの悪性腫瘍の治療や、パーキンソン病の治療などへ適用範囲を広げることを目指し、「承認に必要となるデータを集積していく」(同社)考えである。
2011年12月01日 日経BP

2011年11月15日火曜日

新素材には発がん性が指摘

構造により発がん性に大きな差

さまざまな分野での活用が期待されている炭素で出来た新しい素材「カーボンナノチューブ」は、一方で発がん性が指摘されていますが、構造によってがんの起きやすさに大きな差があることが、名古屋大学などのグループが行った実験で分かりました。

実験を行ったのは、名古屋大学の豊國伸哉教授らのグループです。カーボンナノチューブは高い強度があり、電気をよく通すことから、携帯電話の電池などに使われ、今後、さらに広い分野での活用が期待されていますが、微粒子の状態で大量に体に取り込まれると、がんの一種「中皮腫」を引き起こすおそれがあると指摘されています。

グループでは、太さや硬さを変えた3種類のカーボンナノチューブを水に混ぜてネズミの腹部に大量に注射しました。その結果、太さが直径50ナノメートルで硬く曲がりにくいカーボンナノチューブは、細胞に刺さり、すべてのネズミが中皮腫を発症したのに対し、直径が15ナノメートルと極めて細く曲がりやすいものでは、発症したネズミはいませんでした。

また、硬くて曲がりにくくても、直径を150ナノメートルと太くしたものでは、発症率は17%にとどまりました。豊國教授はヒトへの影響はさらに研究が必要だとしていますが、「太さや硬さといった構造で発がん性の度合いが異なることが分かったので、研究を進めれば、より安全なカーボンナノチューブの開発に役立つ」と話しています。

2011年11月15日 NHK

2011年11月14日月曜日

睡眠時間が長いと がんリスク低下

7時間以上の睡眠で卵巣がんリスク低下- 国立がん研究センター
国立がん研究センターはこのほど、「7時間以上の睡眠は、卵巣がんのリスクを下げる可能性がある」との研究結果をまとめた。
 国内に住む40-69歳の女性約4万5700人を対象に、1990-94年から2008年まで追跡調査した多目的コホート研究のデータを分析。出産回数やBMI、喫煙や運動習慣などと、卵巣がんの発症リスクとの関連を調べた。平均約16年間の期間中、86人が上皮性卵巣がんを発症した。
 分析結果によると、日常の睡眠時間が7時間以上のグループは、6時間未満のグループに比べ、卵巣がんの発症リスクが0.4倍と低かった。また、多くの先行研究で知られている出産歴との関連では、出産回数が1回増えるごとに、リスクは0.75倍に減少する傾向が見られたという。
 同センターの研究班は、「睡眠時間との関連はこれまで報告されておらず、今後の検証が必要」とした上で、「普段の睡眠時間が長いことが、卵巣がんのリスクを下げる可能性がある要因として示された」と指摘している。

2011年11月8日火曜日

がん細胞の断片がワクチン新薬

がん細胞を直接死滅 岡山大発ベンチャー、新薬開発へ


がん細胞を死滅させ、がんへの免疫力も高める治療薬づくりに岡大発ベンチャー企業が5年間4億円で取り組む。科学技術振興機構(JST)の事業に採択され、資金のめどがたった。前立腺がんや中皮腫、腎がん、乳がんへの効果が動物実験で確認された遺伝子を用いる。


 事業主体の桃太郎源(岡山市北区)によると、製剤の元になるのは遺伝子「REIC(レイク)」。無毒化したウイルスに組み込み、直接がんに注射する。がん細胞にREICが増えると、たんぱく質の生産異常を起こして死ぬ。REICが普段からある正常な細胞は、少し増えても問題はない。


 さらに、死んだがん細胞の断片がワクチンのように働き、がんに対する免疫を高めるという。
 岡山大病院では、REICの特許権を持つ公文裕巳教授らが、ウイルスに組み込んだREICを前立腺がん患者で臨床研究中。今のところ安全性に問題は無い。今回は臨床研究中の製剤を改良する。ウイルスへのREIC遺伝子の入れ方を工夫し、薬効を10~100倍に上げ、5年以内に腎がんでの臨床研究を目指すという。


2011年11月5日 47News

2011年11月2日水曜日

がん粒子線治療のノウハウを紹介

がん粒子線治療促進へ 兵庫県の三セク発足 

がんの粒子線治療施設の開設・運営をサポートする県の第三セクター「株式会社ひょうご粒子線メディカルサポート」の設立式が1日、たつの市新宮町光都の県立粒子線医療センターであった。

 同日付で社長に就任した山本亮三・県病院事業副管理者は「これまでの10年間で蓄積した粒子線治療のノウハウを国内外に紹介し、がんと闘う人たちを支援したい」と話した。

 同社は県と装置メーカーの三菱電機などが出資するコンサルタント会社。粒子線治療で国内有数の実績を持つ同センターから派遣された社員が、新たに粒子線治療を始める施設で、施設の設計や治療方法について助言する。対象は三菱電機の装置を導入する施設に限られる。

 社長など役員7人の大半は県職員などとの兼務。社員は5人で、県と三菱電機から派遣する。本年度中は準備期間として顧客にサービス内容の説明などを行い、来年度から本格的に業務を始めるという。

2011年11月2日 神戸新聞

地図画像

糖尿病を克服する新治療法開発

糖尿病克服に道、ソウル大研究陣が新治療法
ソウル大朴聖会教授の研究チーム
急速な高齢化に伴い韓国でも糖尿病患者の数が増え、現在は300万人を上回っている。患者数増加の勢いは「糖尿津波」と呼ばれるほどで、成人10人のうち1人が糖尿病を患っている計算になる。

 血糖を調節するのは膵臓(すいぞう)から分泌されるインシュリンだが、糖尿病患者にはこの膵臓の機能が失われたケースが多い。その場合、生涯にわたり高価なインシュリン注射を投与し続けるか、人間と同じインシュリンを分泌するブタの膵臓細胞を体内に移植するしか方法はない。しかし、ブタの膵臓細胞移植では体内で起こる拒否反応への対策がまだ十分ではなく、世界の医学界で大きな課題とされてきた。ところが今回、この大きな壁を韓国の研究陣が克服した。

 ソウル大学医学部病理学教室の朴聖会(パク・ソンフェ)教授が率いる研究チームは先月31日「糖尿病にかかったサルにブタのランゲルハンス島(膵臓の中にあってインシュリンを分泌する細胞)を移植し、新しく開発した免疫調節抗体(MD-3)を並行して投与したところ、拒否反応を起こすことなくサルの血糖値が自然に調整され、6カ月以上にわたり健康な状態で生存し続けている」と発表した。

 通常は臓器移植から3カ月過ぎて初めて、移植が成功したかどうか判断できる。研究チームは膵臓移植から4カ月後に免疫抑制剤などあらゆる薬剤の投与を中断したが、サルの血糖は移植前の高い状態(400‐500ミリグラム/デシリットル)から低下し、正常値(80‐90)のレベルを維持しているという。一般的に臓器移植を受けた患者は生涯にわたり免疫抑制剤の投与を受け続けなければならないが、今回の研究が実用化されれば、その必要はなくなる。研究チームによると、動物と霊長類間の移植は異種間の障壁が非常に大きいが、免疫抑制剤の投与中断後も拒否反応が見られないケースは、今回の研究が世界で初めてだという。この研究結果は先週、米国マイアミ州で開催された「2011年世界異種移植学会」で発表され「画期的な研究成果」として大きな注目を集めた。

 これまで臓器移植患者は、免疫抑制剤の服用によって外部からのウイルスの侵入や細菌に対する抵抗力が急激に弱まり、肺炎などの感染病にかかりやすいという問題を抱えていた。しかし今回、大きな壁とされてきた「異種間免疫拒否反応」を克服することで、肝臓、腎臓、骨髄など人間同士の移植可能な範囲が拡大する可能性があるとして注目されている。

2011年11月2日 朝鮮日報

抗がん剤による味覚障害

薬が招く味覚障害
抗がん剤では高頻度
超高齢化で増加傾向
「味が分からない」「口の中が苦い」などの症状が現れる味覚障害。その原因の一つに薬の副作用がある。中でも抗がん剤は高い頻度で異常を引き起こすとされるが、ほかにも多種多様な薬剤が引き金になり得る。年を取ると老化で味覚が鈍くなるのに加え、生活習慣病などで薬の服用も増える。超高齢化が進む日本で、薬剤性の味覚障害は増加傾向にあるという。
▽80%近い薬も
「吐き気や骨髄抑制といった抗がん剤によるほかの副作用に比べると、味覚の変化は不明な点が多く、十分な対処がされていない」。四国がんセンター 薬剤科の田頭尚士さんはこう指摘する。
発生状況を明らかにし、患者への的確な情報提供につなげようと、田頭さんらは昨年6~7月、外来でがん化学療法を受けた患者381人を対象に、抗がん剤投与後の味覚の変化についてアンケートを実施した。
その結果、「味覚変化があった」と答えた人は全体の47%。薬剤ごとの発生頻度を調べると、最も高かったのは「エピルビシン」で78・9%。次いで「シクロホスファミド」75・0%、「ドセタキセル」73・2%。また、乳がん治療で用いられるエピルビシンとシクロホスファミドの併用では実に84・6%が味覚の変化を訴えた。 田頭さんは「極めて多くの患者さんが味覚の異常を感じていることが分かった」と話す。
▽240種類
そもそも味覚障害とはどういうものか。
日本大医学部 の池田稔教授(耳鼻咽喉科)によると、症状で最も多いのは味が分からなくなる味覚低下。次が、何も食べていないのに口の中が苦くなる自発性異常味覚。頻度は低いが、本来の味と違う感じ方をする錯味症や、何を食べてもまずく感じる悪味症もある。
舌の表面や、軟口蓋と呼ばれる口の奥の部分には、味細胞が集まってできた「味蕾」という組織がある。この味蕾が味を受け止め、味覚神経を通じて情報を脳に伝える。こうした一連の経路のどこかに異常が生じると、味覚がおかしくなる。
原因はいろいろだが、同大が以前、味覚外来の受診者2278人を調べた結果によると、最も多かったのが薬剤性で、全体の約22%を占めた。
抗がん剤だけでなく、味覚障害を引き起こす可能性がある薬剤は多い。分かっているだけで約240種あり、降圧剤や利尿剤、抗生物質、高脂血症薬、抗不安薬など薬効もさまざまだ。
▽亜鉛と結合
「体内で亜鉛が不足すると味細胞のターンオーバー(生まれ変わり)が遅くなり、強いダメージを受けることが動物実験などで判明している。薬には、亜鉛と結合して体外に排出する作用を持つものがあり、味覚障害を引き起こすと考えられている」と池田さん。
ただ、薬剤性のすべてが亜鉛との関連で説明できるわけではない。薬剤による味細胞の直接的破壊や神経伝達の阻害、特定遺伝子の働きの抑制などが原因となっているケースもあるらしい。
味覚障害は食欲不振を招き、栄養状態を悪化させる。QOL(生活の質)を低下させるだけでなく、治療の妨げになることもある。薬剤性が疑われたら、原因とみられる薬の減量や中止、ほかの薬への変更を行い、亜鉛製剤などを内服するが、抗がん剤のように簡単に減量や中止をできない薬もある。前向きに治療を受けるために、少しでもおいしく食べられるような献立や調理の工夫も必要だ。
2011年11月1日 共同通信

2011年10月27日木曜日

肉腫治療に新薬期待  東大が世界初ゲノム創薬 で新薬治験

肉腫治療へゲノム創薬 世界初 東大が研究、仏で治験

これまで治療薬がなかったがんの一種、肉腫に対する新しい抗体薬を東大医科学研究所の中村祐輔教授の研究室が作り出し、承認に向けてフランスでヒトへの臨床試験(治験)を開始することが16日、分かった。この薬はゲノム(全遺伝情報)解析から標的を見つけたのがきっかけ。中村教授によると、全ゲノム情報を出発点に創薬(抗体薬)が実現すれば、肉腫治療薬の分野で世界初の成果になる。


今回の抗体薬は腕や足などにできる「滑膜肉腫」と呼ばれる肉腫に対するもの。ゲノム研究の第一人者である中村教授が平成14年、ゲノム情報を応用する形で研究に着手。研究室でマウス実験などを繰り返した結果、肉腫治療に応用できる抗体を突き止めた。
仏保健当局から正式承認が下り、臨床試験が仏リヨンの病院、レオンベラールセンターで12月にも始まる。仏以外の欧州連合(EU)各国にも試験を拡大する計画もある。


滑膜肉腫を含めた肉腫は主に10代から20代に発症する命にかかわる難病だが、治療薬の開発はほとんど進んでいない。このため、治療に道筋を示した論文内容を知った欧米の患者から問い合わせが相次ぎ、患者家族が研究室を訪れたこともある。
一方で、日本の対応は冷ややかだ。研究室では日本で臨床試験を行うため、科学技術振興機構の創薬イノベーションプログラムの補助金申請に応募したが、「開発計画の妥当性・実用化の可能性」がないとの理由で却下された。
日本での対応とは対照的に仏の専門医からは、「非常に大きな研究成果だ。ぜひうちで臨床試験をやらせてほしい」と申し出があったという。仏からは補助金も得られることになった。
臨床試験の準備を進めてきた創薬ベンチャーのオンコセラピー・サイエンス(川崎市)の角田卓也社長は「肉腫の治療薬は市場が小さく大手が参入しなかった。臨床試験が成功すれば、世界の患者に治療の道が開ける」と創薬実現に期待を込める。
ただ、中村教授は内閣官房医療イノベーション推進室長を兼ね、本来なら日本発の医薬品開発を推す立場にもある。
中村教授は「私の研究だけでなく、角膜再生医療も日本発のシーズ(技術・情報の種)なのに臨床試験は欧州となった。その理由は創薬や先端的医療は霞が関行政の谷間にあるからだ」と、日本での体制づくりが急務と指摘している。


【用語解説】ゲノム創薬
ヒトゲノム(全遺伝情報)を解析し、疾患や体質の原因となる遺伝子を突き止め、その情報を元に新しい医薬品やより効果的で副作用の少ない薬の研究、開発をする手法。ヒトゲノムのDNAの塩基配列が2003(平成15)年に日米英などの国際チームによって解明されたことで、創薬の動きが加速した。病気の原因に直接作用するため、薬の効果が高まることや、患者の遺伝子情報に基づいた個別の創薬も可能になることが期待されている。

2011年10月17日 産経新聞

2011年10月25日火曜日

免疫力を活用しがん細胞のみ攻撃する新薬

久留米大のがんワクチン、実用化へ前進

第4のがん治療法として久留米大学が開発した前立腺がん患者に対する「がんペプチドワクチン」の実用化に向けた研究が24日、独立行政法人科学技術振興機構(JST)の支援事業に採択された。開発を支援してきた県と同大学が発表した。両者によると支援額は最高20億円。5~6年後の医薬品承認を目指した臨床試験が来年度から始まる。

ワクチンを開発した久留米大学医学部の伊東恭悟教授によると、治療法はがん細胞の表面にあるたんぱく質の断片(ペプチド)を患者に注射し、がん細胞を攻撃する免疫細胞を増やしてがんの進行を抑える。

外科手術、抗がん剤、放射線治療に次ぐ第4のがん治療法で、患者自身の免疫力を活用し、がん細胞のみを攻撃する。副作用が少ないのが特長という。ただ、ワクチンは公的医療保険がきかない未承認薬。これまでに久留米大学の研究者らが出資したベンチャー企業が安全性を確認する臨床試験をしてきた。

来年度から進める臨床試験は、医薬品も手がける富士フイルムが実施。全国の施設で数百人の患者にワクチンを注射し、医薬品としての効果を確認するという。

2011年10月25日 朝日新聞

2011年10月24日月曜日

糖尿病を完全に克服する根治療法へ

細胞シートで糖尿病根治 東京女子医大など治療法
膵臓の細胞培養し皮下移植


東京女子医科大学の大橋一夫特任准教授と福島県立医科大学の後藤満一主任教授らは、膵臓(すいぞう)の細胞(膵島細胞)をシート状に培養して移植する新しい糖尿病の治療法を開発した。マウスの実験で長期間、血糖値を正常に保つことを確認した。膵島細胞をじかに移植する治療法よりも効果が高いという。将来、iPS細胞(新型万能細胞)と組み合わせれば、糖尿病を完全に克服する根治療法の実現につながるとみている。


ラットの膵島細胞を採取し、特殊な培養皿の上で直径2センチメートル、厚さ15マイクロ(マイクロは100万分の1)メートルのシート状に培養した。糖尿病のモデルマウスの背中の皮膚の下に2枚のシートを重ねて移植し、約4カ月間、血糖値の変化をみた。


11匹すべてで移植後約3日目から血糖値が正常になり、エサを与えた後も糖尿病でよくみられるような異常な急上昇はなくなった。
移植したシートを調べると、膵島と同じように、β細胞が円の中心部分に集まり、外側をα細胞が取り巻いていた。β細胞は血糖値を下げるインスリンを、α 細胞は血糖値を上げるグルカゴンを出す。両細胞が規則正しく存在することで血糖値が高い時は下げ、下がると自然に正常値に戻し低血糖になりすぎるのを防いでいるとみられる。


膵島移植のように、膵島細胞を直接マウスの肝臓の血管に入れた場合、血糖値は少し下がるものの、正常値まではなかなか下がらなかった。「シート化することで一定量の細胞が塊となり、効果を高めた。臨床への応用が十分期待できる」(後藤主任教授)という。


東京女子医大はカナダのアルバータ大とも共同研究を進めており、ヒトの膵島細胞のシート培養に成功した。今後、動物に移植して安全性と有効性を確認した上で、臨床応用を目指す。
また、患者から採取した膵島細胞を一定量まで増やすのは難しいため、iPS細胞から膵島細胞を作製し、シート化していくことも検討する。


2011年10月24日 日本経済新聞

東京女子医科大学

2011年10月18日火曜日

肉腫治療に新薬期待  東大が世界初ゲノム創薬 で新薬治験

肉腫治療へゲノム創薬 世界初 東大が研究、仏で治験

 これまで治療薬がなかったがんの一種、肉腫に対する新しい抗体薬を東大医科学研究所の中村祐輔教授の研究室が作り出し、承認に向けてフランスでヒトへの臨床試験(治験)を開始することが16日、分かった。この薬はゲノム(全遺伝情報)解析から標的を見つけたのがきっかけ。中村教授によると、全ゲノム情報を出発点に創薬(抗体薬)が実現すれば、肉腫治療薬の分野で世界初の成果になる。


 今回の抗体薬は腕や足などにできる「滑膜肉腫」と呼ばれる肉腫に対するもの。ゲノム研究の第一人者である中村教授が平成14年、ゲノム情報を応用する形で研究に着手。研究室でマウス実験などを繰り返した結果、肉腫治療に応用できる抗体を突き止めた。
 仏保健当局から正式承認が下り、臨床試験が仏リヨンの病院、レオンベラールセンターで12月にも始まる。仏以外の欧州連合(EU)各国にも試験を拡大する計画もある。


 滑膜肉腫を含めた肉腫は主に10代から20代に発症する命にかかわる難病だが、治療薬の開発はほとんど進んでいない。このため、治療に道筋を示した論文内容を知った欧米の患者から問い合わせが相次ぎ、患者家族が研究室を訪れたこともある。
 一方で、日本の対応は冷ややかだ。研究室では日本で臨床試験を行うため、科学技術振興機構の創薬イノベーションプログラムの補助金申請に応募したが、「開発計画の妥当性・実用化の可能性」がないとの理由で却下された。
 日本での対応とは対照的に仏の専門医からは、「非常に大きな研究成果だ。ぜひうちで臨床試験をやらせてほしい」と申し出があったという。仏からは補助金も得られることになった。
 臨床試験の準備を進めてきた創薬ベンチャーのオンコセラピー・サイエンス(川崎市)の角田卓也社長は「肉腫の治療薬は市場が小さく大手が参入しなかった。臨床試験が成功すれば、世界の患者に治療の道が開ける」と創薬実現に期待を込める。
 ただ、中村教授は内閣官房医療イノベーション推進室長を兼ね、本来なら日本発の医薬品開発を推す立場にもある。
 中村教授は「私の研究だけでなく、角膜再生医療も日本発のシーズ(技術・情報の種)なのに臨床試験は欧州となった。その理由は創薬や先端的医療は霞が関行政の谷間にあるからだ」と、日本での体制づくりが急務と指摘している。


【用語解説】ゲノム創薬
 ヒトゲノム(全遺伝情報)を解析し、疾患や体質の原因となる遺伝子を突き止め、その情報を元に新しい医薬品やより効果的で副作用の少ない薬の研究、開発をする手法。ヒトゲノムのDNAの塩基配列が2003(平成15)年に日米英などの国際チームによって解明されたことで、創薬の動きが加速した。病気の原因に直接作用するため、薬の効果が高まることや、患者の遺伝子情報に基づいた個別の創薬も可能になることが期待されている。

2011年10月17日  産経新聞

2011年6月29日水曜日

がんの2015年問題とは

日本人の「3人に2人が『がん』になる」「2人に1人が『がん』で亡くなる」・がんの2015年問題とは

部 位は異なれど、最近芸能人や著名人が相次いでがんを原因として亡くなっている。当方も本業でがんの話をよく耳にするため、気にならざるを得ない。しばらく 前にたばことがんの関係について何度か記事にしたのもそれが一因だが、先日相次いでがんに関する気になるフレーズを耳にした。一つが「日本人の2人に1人 ががんになり、3人に1人ががんで亡くなる時代」、もう一つが「がんの2015年問題」というものだ。良い機会なのでここで整理してみることにする。

●日本人の2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで亡くなる時代

こ のフレーズは、元々秋元康氏の著書で今秋映画化されるのに伴い連載が決まった漫画【象の背中】という作品で、第一回目の扉ページにキャッチコピーとして用 いられている。ちなみにこの作品、肺がんで余命半年を宣告された48歳のごく普通のサラリーマンが、自分の死を正面から見据えて過ごす最後の「とき」を描 いたもの(主演は役所公司と今井美樹だそうな)。

元々「日本人の2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで 亡くなる」という話は誇張でもなんでもなく、事実以外の何ものでもない。詳しくは【厚生労働省】や【国立がんセンター】の各データが詳しいが、例えば【参 議院・厚生労働委員会調査室の3月2日付け資料(PDF)】によると、「日本人の2人に1人ががんに罹(かか)り、3人に1人ががんで死亡している」と明記されている。また、昨年の【厚生労働省資料(PDF)】でも、

・日本人男性の2人に1人、女性の3人に1人ががんになる
・日本人の3人に1人ががんで死亡
(男性19万6603人(全死因に対し33.6%)、女性12万9338人(全死因に対し25.9%))

と 明記されている。ここで注意してほしいのは「全人口の1/3ががんで死亡する」という意味ではなく「死因のうち1/3ががんである」ということ。ちなみに トリビア的な話になるが、同資料によると2004年の時点でがん関連の医療費は国民全体の医療費の9.6%にあたる2兆3306億円だという。

また、国立がんセンターの資料にもあるように、40歳を越えた時点でがんの死亡率は上昇し始める。
年齢別がん死亡率(2004年、全部位)
年齢別がん死亡率(2004年、全部位)

日 本では人口の減少と共に高齢化が進んでいる。年齢が高いほどがんにかかるリスクも(それだけ生き長らえているから)高くなり、体力の問題も合わせて死亡リ スクも増える。よって、死亡率そのものは上昇傾向にある(このあたり、次の項目にも関連する)。これを年齢の構成率を調整した上で再計算した「年齢調整死 亡率」で見ると、ほぼ横ばいの形になる。

「が んによる死亡率が増加している」という話はよく聞くが、医学で対処できないがんが急増したり、耐性が弱くなっているわけではない(人工添加物摂取の問題や 環境汚染などで多少の悪化はあるかもしれないが……)。基本的には単に高齢化により、日本人全体としてリスクが高まっているから、というのが実情だ。

●がんの2015年問題

「20XX年問題」というフレーズはよく耳にするが、がん関連でもっともよく聞かれるのがこの「がんの2015年問題」。現在は「日本人の2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで亡くなる」状況にあるというのはすでに説明した通りだが、これが2015年には

3人に2人ががんに罹(かか)り、2人に1人ががんで亡くなる

といった状況になるという。かかる率が16.6%増加し、亡くなる率が16.6%増えるというわけだ。

こ れは厚生労働省が2002年に発表した「がん生存者の社会的適応に関する研究」2002年報告書に記載されているもので、その一部は【がん生存者の社会的 適応に関する研究】にて閲覧できる。また、原文を元にした学術書やレポートは多数製作されているので、そちらでも確認できるだろう。

例えば【2006年に作成された厚生労働省の「がん対策の推進に関する意見交換会」資料(PDF)】によれば、2015年でがん患者は倍増し、以降は2050年まで横ばいで推移する。

ただしこちらも先の項目のように、年齢構成を考慮していない数字であることに注意しなければならない。高齢化が進んでいるため、粗の「がんにかかる率」「がんによる死亡率」は増加しているが、年齢構成を調整した値としては「死亡率は減少」「かかる率は横ばい」傾向にある。

年齢調整についてもっと詳しく知りたい人は、【国立がんセンターの年次推移ページ】を参照してほしい。詳細なデータを確認できる。

と もあれ「がん」は細胞のイレギュラー的増殖というやっかいな病気であるため、他の大多数の病気と違って根本的な解決・根治法が見つかっていない。それだけ に、長生きすればするほどかかる率・亡くなる率も高まるため「高齢化が進むと見た目で発病率・死亡率が増える」という現象が起きる。「がんの 2015年問題」もまさにそこに端を発するもの。

もし「がんの発症率や死亡率がこんなに高いだなんて」と思っていた人がいたら、まずは安心してほしい。医学の進歩以上にがんという病気が悪性化しているわけではないのだから。

そ して一息ついたら心配もしてほしい。年齢構成による調整は必要だが、現在において「日本人の2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで亡くなる」という ことや、2015年には3人に2人ががんに罹(かか)り、2人に1人ががんで亡くなる」という状況にいたる推定が出ているのは事実に違いはない (繰り返しになるが意味を取り違えないように。現在なら「死亡原因のうち1/3ががんである」ということ)。

怪しげな民間療法はともかく、今ではがんにかかりにくい生活を過ごすためのアドバイスが山のように存在する。万一(……ではない)がんをわずらってしまうことになっても、早期発見が出来れば生存率はきわめて高い。そのための検査方法も多種多様に用意され環境も整備されている。

さらに治療方法も進歩し、いざとなれば最先端の医療技術を駆使してもらえるだろう。公的保険が利かない高度先進医療を気軽に選択できるよう、金銭的なサポートが受けられる多種多彩ながん保険も用意されている。

まずは事実と情報をしっかりと把握し、現実を見据え、その上で「備えあれば憂い無し」の手を打つ。それが今ひとりひとりができる、最善の対処策といえるだろう。

2007年7月2日 Garbagenews.com

女性が将来かかる がん

女性が「将来かかるかも」と心配する病気、トップは乳がん

アメリカンホーム保険は2011年6月22日、女性の「疲れ」に関する調査結果を発表した。それによると女性から成る調査母体においては、将来自分が発症するかもしれないと心配している病気のトップには「乳がん」がついた。半数強の人が気にしている。次いで「子宮がん」「更年期障害」「認知症」がいずれも過半数の値で続いている。全般的に「がん」への心配度は高いものの、「大腸がん」「肺がん」など一部の部位のがんはあまりリスクを感じていない傾向がある(【発表リリース】)。

今調査は2011年4月22日から25日にかけて全国(岩手・宮城・福島・青森・茨城県をのぞく)に対して携帯電話利用のインターネット経由で、 20~49 歳の女性有職者及び専業主婦に対して行われたもので、有効回答数は1002人。年齢階層比は20代・30代・40代で均等割り当て。

病気は誰にとっても怖いもの。ましてや経年と共に発症可能性が増加するものとなれば、色々と備えたり、予防策を調べて努力をしたり、定期検診を受けて 早期発見を心がけることになる。今調査母体で「将来(自分が発症するかもしれないと)心配な病気」について複数回答で聞いた結果が次のグラフ。トップは「乳がん」で、過半数の人が心配をしている。

乳がん」は特に女性に多い「がん」で、女性が気にするのも当然といえる。第二位の「子宮がん」 も同様(というより、こちらは女性特有)。第三位の「更年期障害」も女性発症の場合が極めて多く、上位陣、そして過半数の人が気にしている病症はいずれも 「女性が発症しやすい病気」ということになる。もちろん発症リスクが高い病気に対し(通常レベルでの)心配をするのは、ごく普通の現象といえ、心配する行 為自身を気に病むことは無い。

全般に「がん」への懸念度は高めだが、「肺がん」の値が低めなのが気になる。しかしこれはあくまでも全体値での話。煙草を吸っているか否かで見ると、大きな違いが生じている。

喫煙者の「肺がん」への心配度は実に半数近く。これが卒煙者(以前喫煙していたが、今は禁煙している人)になると2割に減り、元々喫煙経験の無い人は1割強にまで減る。今回グラフ生成は略するが、全般的に喫煙者は「肺がん」以外にも「がん」全般への発症リスクを気にする人の割合が大きく、たばことがんの関係を多かれ少なかれ頭に想い浮かべていることが分かる。

余談ではあるが、現時点で最新の【厚生労働省による人口動態統計(確定数)の概況(2009年)】によれば、女性の死因トップは「悪性新生物」。実質的に「がん」がついており、次いで「心疾患」となっている。

【日本人の「3人に2人が『がん』になる」「2人に1人が『がん』で亡くなる」・がんの2015年問題とは】という話もある。正しい知識を持った上で、正しく恐れ、備え、予防策をこなしていくべきだろう。

2011年6月29日 サーチナ

2011年5月18日水曜日

がん抗原ペプチドに関する欧州特許出願

メディネット、欧州特許庁よりHSP105由来がん抗原ペプチドの特許査定を受領

株式会社メディネットは、くまもとテクノ産業財団より譲渡を受けたHSP105由来がん抗原ペプチドに関する欧州特許出願について、欧州特許庁より特許査定を受けたことに伴い、欧州11カ国に移行手続を行なうことといたしましたのでお知らせします。

HSP105は、大腸がん膵がん乳がん食道がん等の多くの症例において過剰発現が確認されているタンパク質です。メディネットは、国立がん研究センターと共同で、HSP105 由来抗原ペプチドの有用性の検証及びがん抗原特異的CTL 療法に係る新規技術の開発を行なっており、欧州において本特許を取得することで、本特許発明を用いたペプチドワクチン、DCワクチン等の製造、および使用のライセンスアウト等が可能となります。

メディネットは、欧州11カ国において移行手続きを行ない、特許取得が完了することで、今後、ランセンス活動の推進が期待されるとともに、より個別化されたがん治療の実現に寄与できるものと考えています。

2011年5月17日 プレスリリース

転移性乳がんへの適応を承認

「HALAVEN」後期転移性乳がんの適応でスイス連邦医薬品庁から承認取得

エーザイ株式会社(本社:東京都、社長:内藤晴夫)は、このたび、当社が創製・開発した新規抗がん剤「HALAVEN(R)」(エリブリンメシル酸塩) が、「アントラサイクリン系、タキサン系およびカペシタビンなどの抗がん剤を含むがん化学療法による前治療歴のある局所進行性・転移性乳がん」患者様に対 する単剤療法として、スイス連邦医薬品庁(Swissmedic)より承認を取得した、と発表しました。

当社は、アンメット・メディカル・ニーズの高い後期転移性乳がんに対して「HALAVEN(R)」を少しでも早く患者様にお届けすべく、スイス、シンガ ポール審査当局に対して211試験(第II相臨床試験)等をもっていち早く申請しました。Swissmedicでは本剤のグローバル第III相臨床試験で あるEMBRACE試験(Eisai Metastatic Breast Cancer Study Assessing Treatment of  Physician’s Choice vs Eribulin E7389)とともに審査中でした。なお、シンガポールでは2011年2月に承認を取得 しています。

当社は、アンメット・メディカル・ニーズの高い後期転移性乳がんに対して「HALAVEN(R)」を少しでも早く患者様にお届けすべく、スイス、シンガ ポール審査当局に対して211試験(第II相臨床試験)等をもっていち早く申請しました。Swissmedicでは本剤のグローバル第III相臨床試験で あるEMBRACE試験(Eisai Metastatic Breast Cancer Study Assessing Treatment of  Physician’s
今回のSwissmedicによる「HALAVEN(R)」の承認によってスイスの後期転移性乳がんの患者様がこの革新的な治療薬にアクセスすることが可 能となります。乳がんは、世界中で2番目に多く診断されるがんであり、毎年約130万人が罹患しています。スイスでは、乳がん患者様数が5,000人を越 え、毎年、約1,400人が乳がんで亡くなられています1),2)。 Choice vs Eribulin E7389)とともに審査中でした。なお、 シンガポールでは2011年2月に承認を取得しています。

今回のSwissmedicによる「HALAVEN(R)」の承認によってスイスの後期転移性乳がんの患者様がこの革新的な治療薬にアクセスすることが可 能となります。<b>乳がん</b>は、世界中で2番目に多く診断されるがんであり、毎年約130万人が罹患しています。スイス では、乳がん患者様数が5,000人を越え、毎年、約1,400人が乳がんで亡くなられています。

本剤は、米国(2010年11月)、シンガポール(2011年2月)、欧州(2011年3月)で承認を取得しており、2011年4月には日本でも承認されました。今回の承認は世界で5番目となるほか、本剤は現在、カナダで承認審査中です。

2011年5月17日 プレスリリース

2011年5月12日木曜日

胃がんの新薬候補

バイエル薬品、「Regorafenib」の消化管間質腫瘍治療でFDAからファストトラック指定を取得

米国食品医薬品庁(FDA)、Regorafenib(レゴラフェニブ)を消化管間質腫瘍に対する治療で、ファストトラック品目に指定。

独バイエル ヘルスケア社は、12日に治験中の新規化合物regorafenib(レゴラフェニブ、BAY73-4506)が、imatinib およびsunitinib による治療にて病勢進行が認められた転移性または根治切除不能な消化管間質腫瘍(GIST:Gastrointestinal Stromal Tumors)、の患者さんの治療に対して、米国食品医薬品庁(FDA)からファストトラック指定を受けたと発表しました。

米国におけるファストトラック指定とは、深刻な疾患に対する治療薬の開発を促進し、承認審査を早め、アンメットメディカルニーズ(満たされない医療ニー ズ)を満たすための制度です。ファストトラック指定を受けた新薬候補は、開発及び承認審査の全期間において、FDAと製薬企業の早期からの頻繁な協議が推 進されることで早期承認が期待されます。結果としてがん治療新薬がより早く患者の手元に届くことが可能になるのです。

regorafenibは、血管新生阻害作用および腫瘍増殖阻害作用によって腫瘍の成長を阻害し、優れた抗腫瘍効果を持つことが示されています。胃がん小腸がん新薬として、近い将来の承認と販売開始が大いに期待されるのです。

すい臓がん新薬をFDAが承認

すい臓がんは適用できる抗がん剤が少ない治療の難しいがんです。厳しい現実ではあるものの、助かる人もいるにはいる。

希望を持って治療すればすい臓がん治療も治る可能性はまだ有ります。

2011年5月10日 ミクスONLINE
FDA  アフィニトールの膵がん適応を承認

米食品医薬品局(FDA)は5月6日、ノバルティスのmTOR(哺乳類ラパマイシン標的タンパク質)阻害剤アフィニトール(エベロリムス)について、切除不能あるいは転移・進行性膵内分泌腫瘍(PNET)の適応を承認したと発表した。

PNETは、進行が遅くまれな腫瘍で、米国では毎年新規患者は1000人以下といわれる。同剤の安全性、有効性は、410人を対象としたRCTで検証され た。主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)で、プラセボ投与群の4.6 か月に比べアフィニトール投与群では11か月(中間値)と約2倍に延長した。

主な副作用は、口内炎、発疹、下痢、疲労感、浮腫、胃痛、悪心、発熱、頭痛など。

2011年4月27日水曜日

白血病リンパ腫の新薬

成人T細胞白血病リンパ腫の治療剤「KW-0761」の国内医薬品製造販売承認を申請

協和発酵キリン株式会社は、2011年4月26日に成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)(注1)を適応症として開発中のKW-0761の国内医薬品製造販売承認を厚生労働省に申請した。

KW-0761は独自の強活性抗体作製技術「POTELLIGENT(R)(ポテリジェント)」を応用したヒト化モノクローナル抗体。化学療法奏効後に再発又は再燃したCCR4陽性成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)を対象としている医薬品製造販売承認申請をする抗体で、ポテリジェント抗体としては、世界で初めての医薬品製造販売承認申請となった。

国内で実施した臨床試験の結果を踏まえ、製造販売承認申請に至ったKW-076は厚生労働省よりCCR4陽性のATLを対象疾病とした希少疾病用医薬品の指定を受けている。

2011年4月23日土曜日

手術不能乳がん・転移乳がんへ新薬

新規抗がん剤ハラヴェンが承認取得- エーザイ

エーザイは4月22日、新規作用機序の抗がん剤ハラヴェン静注が「手術不能又は再発乳がん」の効能・効果で製造販売承認を取得したと発表した。既に欧米などで承認されており、エーザイは3月に発表した中期戦略計画で、ハラヴェンの2015年以降の全世界売上高目標を20億ドルとしている。

欧米を中心に行ったグローバルフェーズ3試験では、主要評価項目である全生存期間中央値がハラヴェン投与群では13.1か月となり、主治医選択治療群の10.6か月に対し、2.5か月間延長したという。
ハラヴェン投与群で高頻度(頻度25%以上)で認められた有害事象は、無気力(疲労感)、好中球減少、貧血、脱毛症、末梢神経障害(無感覚、手足などのしびれ)、吐き気、便秘だった。このうち、特に重篤な有害事象として報告されたのは好中球減少(発熱を伴う症例が4%、発熱を伴わない症例が2%)。投与中止に至った主な有害事象は末梢神経障害(5%)だった。

通常、成人には、1 日1 回1.4 mg/平方メートル(体表面積)を2-5 分間かけて、週1 回、静脈内投与する。これを2 週連続で行い、3 週目は休薬する。これを1 サイクルとして、投与を繰り返す。患者の状態により適宜減量する。

2011年4月22日 キャリアブレイン


エーザイ、生存延長の治験結果を持つ乳がん治療薬の承認取得

エーザイは22日、乳がん治療の抗がん剤「ハラヴェン」の日本での製造販売承認を取得したと発表した。臨床試験(治験)でハラヴェンを投与した乳がん患者は、他の抗がん剤などで治療した患者と比べ、生存期間が約3カ月長かった。薬価(医薬品の公定価格)が決まり次第、発売する。

ハラヴェン投与患者の生存期間の中央値は13.2カ月で、他の治療法では10.5カ月だった。エーザイは欧米でも承認を得ており、各国で順次発売する。2015年までに10億ドル(約820億円)の世界売上高を目指す。

2011年4月22日 日本経済新聞

2011年4月22日金曜日

乳がんの新検査法

乳がん診断に「新兵器」 高い発見能力の「PEM」

米国で普及し始めた新しい乳がん検査法「陽電子放射乳房撮影(PEM)」をご存じだろうか。乳房のがん細胞発見を目的に開発された検査方法で、通常の検診に使われているマンモグラフィーなどより、明確に患部の大きさや位置を捉えると期待が集まっている。(日野稚子)

 ■「全身病」と考える

「30~64歳女性のがん死亡原因第1位は乳がん。 増加傾向は止められない状況だからこそ、自分の命を守るため検診を考えて」と話すのは、聖マリアンナ医科大学ブレスト&イメージングセンター(ブレストセ ンター)の福田護院長だ。「ピンクリボン運動」を推進するなど乳がん啓発活動を行う「NPO法人乳房健康研究会」の創設メンバーで、乳がん治療の専門家 だ。

乳がん治療は変わってきた。「昔のように乳房単独ではなく全身病と考える。がん細胞の性質に合わせ、患部切除前後で抗がん剤や女性ホルモンの投与、放射線照射などを行うし、乳房温存手術ができる場合もある」(福田院長)。乳がんは、乳腺にある「乳管」内側にできた非浸潤がんと、乳管から外に出た浸潤がんに大別する。浸潤がんは転移可能性が高いが、2センチ以下でリンパ節転移前の「早期がん」の段階で治療を始めれば再発率は低くなる。非浸潤がんは、しこりができるともかぎらない。

 ■痛みなく高精度

がん細胞を撮影する「陽電子放射断層撮影(PET)」検査は、がん細胞が正常細胞よりも多く取り込む放射性検査薬を体内に注入し、放射線発生部位を撮影する。このPET原理を応用し、乳房専用に開発されたのがPEMだ。

「PET検査は全身撮影で空間分解能が5ミリなので、乳がん細胞はぼんやりとしか撮れない。PEMでは、放射線検出器を胸に当てて撮像するので、明瞭かつ撮影範囲も広い画像になる」と解説するのは、日本初のPEM機器導入施設で、医療法人社団ゆうあい会「ゆうあいクリニック」(横浜市)の片山敦理事長。

乳房の画像診断はX線撮影の「マンモグラフィー」と「超音波診断装置(エコー)」が主流だ。マンモグラフィーは乳房を押し潰すため激痛を伴う場合が多い。乳腺組織と乳がんのしこり両方が白く写り、がん確定診断や若い女性では不向きな面もある。エコー検査は痛みはないが、石灰化病変は不得手という。「右乳房のがんが疑われ、細胞診や切開しての病理検査も陰性だった40代女性をPEMで調べたら、両側乳房にがんがあった。検査を何度受けても偽陽性と偽陰性を行き来する“検査難民”は多い」(片山理事長)

同クリニックでは5月から、一般からもPEM検査の予約を受け付ける。実際にPEM検査を受けてみた。撮影は片側につき上下・左右2方向で約40分ほどだが、マンモグラフィーで感じる痛みがない分、気が楽だった。


同クリニックは聖マリアンナ医大、昭和大学などとPEM診断の臨床研究中で、がん患者をメーンに4月中旬までに撮影を20例行った。ブレストセンターの福田院長は「診断精度を検証中だが、非常に小さいサイズでの発見能力があるといえるだろう。非浸潤がんも見つかり驚いている。従来の画像診断では難しかったり、精密診断を要する事例では有効かもしれない」と話している。

2011年4月22日 産経新聞

C型肝炎のがんゲノム解析

HCV由来肝癌全ゲノムを世界で初めて解読‐診断・治療の分子候補を同定

C型肝炎ウイルス(HCV)感染を原因とする肝癌の全ゲノムを、国立がん研究センターと東京大学先端科学技術研究センターのグループが、世界で初めて解 読した。HCV肝癌の全ゲノム解析から、癌抑制遺伝子の変異など、多数の遺伝子異常が起きていることが分かったことで、今後、新たな診断・治療につながる ことが期待される。研究は、癌の遺伝子異常についてのカタログ作りに取り組んでいる「国際がんゲノムコンソーシアム」の一環として行われたもので、英国の乳癌解析に次ぐ2番目の報告になる。

今回、詳細な解析ができたのは、70代男性患者1人。解析では、63個のアミノ酸置換を引き起こす遺伝子変異と、4個の融合遺伝子を含めた、肝臓癌で起 こっているゲノム異常の全体像を明らかになっている。また、HCV肝癌で特徴的な遺伝子変異パターンのほか、ごく一部の細胞でだけ癌抑制遺伝子の変異が 見られるなど、肝癌の複雑さも明らかになっている。
C型肝炎から肝癌発生に至るまでには20~30年の経過があり、いつ、どこで、どのように癌のゲノム変異が起きているか、また各種のゲノム変異に共通パ ターンがあるかどうかなどが分かれば、新たな診断・治療法の開発につながる。国立がん研究センターの嘉山孝正理事長は、HCV肝癌のゲノム全体像が解読さ れたことで、「ゲノム解析情報に基づく癌個別化医療の実現へ大きく近づいた」としている。
ただ、これまでもHCV肝癌については、いろいろなタイプが混在していることが想定されており、今回の1患者だけの解析では、HCV肝癌のゲノム変異全体像を映し出しているとはいえないため、研究グループでは今後、さらに症例を増やして、解析を進めることにしている。
2011年4月21日 薬事日報