2011年6月29日水曜日

がんの2015年問題とは

日本人の「3人に2人が『がん』になる」「2人に1人が『がん』で亡くなる」・がんの2015年問題とは

部 位は異なれど、最近芸能人や著名人が相次いでがんを原因として亡くなっている。当方も本業でがんの話をよく耳にするため、気にならざるを得ない。しばらく 前にたばことがんの関係について何度か記事にしたのもそれが一因だが、先日相次いでがんに関する気になるフレーズを耳にした。一つが「日本人の2人に1人 ががんになり、3人に1人ががんで亡くなる時代」、もう一つが「がんの2015年問題」というものだ。良い機会なのでここで整理してみることにする。

●日本人の2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで亡くなる時代

こ のフレーズは、元々秋元康氏の著書で今秋映画化されるのに伴い連載が決まった漫画【象の背中】という作品で、第一回目の扉ページにキャッチコピーとして用 いられている。ちなみにこの作品、肺がんで余命半年を宣告された48歳のごく普通のサラリーマンが、自分の死を正面から見据えて過ごす最後の「とき」を描 いたもの(主演は役所公司と今井美樹だそうな)。

元々「日本人の2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで 亡くなる」という話は誇張でもなんでもなく、事実以外の何ものでもない。詳しくは【厚生労働省】や【国立がんセンター】の各データが詳しいが、例えば【参 議院・厚生労働委員会調査室の3月2日付け資料(PDF)】によると、「日本人の2人に1人ががんに罹(かか)り、3人に1人ががんで死亡している」と明記されている。また、昨年の【厚生労働省資料(PDF)】でも、

・日本人男性の2人に1人、女性の3人に1人ががんになる
・日本人の3人に1人ががんで死亡
(男性19万6603人(全死因に対し33.6%)、女性12万9338人(全死因に対し25.9%))

と 明記されている。ここで注意してほしいのは「全人口の1/3ががんで死亡する」という意味ではなく「死因のうち1/3ががんである」ということ。ちなみに トリビア的な話になるが、同資料によると2004年の時点でがん関連の医療費は国民全体の医療費の9.6%にあたる2兆3306億円だという。

また、国立がんセンターの資料にもあるように、40歳を越えた時点でがんの死亡率は上昇し始める。
年齢別がん死亡率(2004年、全部位)
年齢別がん死亡率(2004年、全部位)

日 本では人口の減少と共に高齢化が進んでいる。年齢が高いほどがんにかかるリスクも(それだけ生き長らえているから)高くなり、体力の問題も合わせて死亡リ スクも増える。よって、死亡率そのものは上昇傾向にある(このあたり、次の項目にも関連する)。これを年齢の構成率を調整した上で再計算した「年齢調整死 亡率」で見ると、ほぼ横ばいの形になる。

「が んによる死亡率が増加している」という話はよく聞くが、医学で対処できないがんが急増したり、耐性が弱くなっているわけではない(人工添加物摂取の問題や 環境汚染などで多少の悪化はあるかもしれないが……)。基本的には単に高齢化により、日本人全体としてリスクが高まっているから、というのが実情だ。

●がんの2015年問題

「20XX年問題」というフレーズはよく耳にするが、がん関連でもっともよく聞かれるのがこの「がんの2015年問題」。現在は「日本人の2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで亡くなる」状況にあるというのはすでに説明した通りだが、これが2015年には

3人に2人ががんに罹(かか)り、2人に1人ががんで亡くなる

といった状況になるという。かかる率が16.6%増加し、亡くなる率が16.6%増えるというわけだ。

こ れは厚生労働省が2002年に発表した「がん生存者の社会的適応に関する研究」2002年報告書に記載されているもので、その一部は【がん生存者の社会的 適応に関する研究】にて閲覧できる。また、原文を元にした学術書やレポートは多数製作されているので、そちらでも確認できるだろう。

例えば【2006年に作成された厚生労働省の「がん対策の推進に関する意見交換会」資料(PDF)】によれば、2015年でがん患者は倍増し、以降は2050年まで横ばいで推移する。

ただしこちらも先の項目のように、年齢構成を考慮していない数字であることに注意しなければならない。高齢化が進んでいるため、粗の「がんにかかる率」「がんによる死亡率」は増加しているが、年齢構成を調整した値としては「死亡率は減少」「かかる率は横ばい」傾向にある。

年齢調整についてもっと詳しく知りたい人は、【国立がんセンターの年次推移ページ】を参照してほしい。詳細なデータを確認できる。

と もあれ「がん」は細胞のイレギュラー的増殖というやっかいな病気であるため、他の大多数の病気と違って根本的な解決・根治法が見つかっていない。それだけ に、長生きすればするほどかかる率・亡くなる率も高まるため「高齢化が進むと見た目で発病率・死亡率が増える」という現象が起きる。「がんの 2015年問題」もまさにそこに端を発するもの。

もし「がんの発症率や死亡率がこんなに高いだなんて」と思っていた人がいたら、まずは安心してほしい。医学の進歩以上にがんという病気が悪性化しているわけではないのだから。

そ して一息ついたら心配もしてほしい。年齢構成による調整は必要だが、現在において「日本人の2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで亡くなる」という ことや、2015年には3人に2人ががんに罹(かか)り、2人に1人ががんで亡くなる」という状況にいたる推定が出ているのは事実に違いはない (繰り返しになるが意味を取り違えないように。現在なら「死亡原因のうち1/3ががんである」ということ)。

怪しげな民間療法はともかく、今ではがんにかかりにくい生活を過ごすためのアドバイスが山のように存在する。万一(……ではない)がんをわずらってしまうことになっても、早期発見が出来れば生存率はきわめて高い。そのための検査方法も多種多様に用意され環境も整備されている。

さらに治療方法も進歩し、いざとなれば最先端の医療技術を駆使してもらえるだろう。公的保険が利かない高度先進医療を気軽に選択できるよう、金銭的なサポートが受けられる多種多彩ながん保険も用意されている。

まずは事実と情報をしっかりと把握し、現実を見据え、その上で「備えあれば憂い無し」の手を打つ。それが今ひとりひとりができる、最善の対処策といえるだろう。

2007年7月2日 Garbagenews.com

女性が将来かかる がん

女性が「将来かかるかも」と心配する病気、トップは乳がん

アメリカンホーム保険は2011年6月22日、女性の「疲れ」に関する調査結果を発表した。それによると女性から成る調査母体においては、将来自分が発症するかもしれないと心配している病気のトップには「乳がん」がついた。半数強の人が気にしている。次いで「子宮がん」「更年期障害」「認知症」がいずれも過半数の値で続いている。全般的に「がん」への心配度は高いものの、「大腸がん」「肺がん」など一部の部位のがんはあまりリスクを感じていない傾向がある(【発表リリース】)。

今調査は2011年4月22日から25日にかけて全国(岩手・宮城・福島・青森・茨城県をのぞく)に対して携帯電話利用のインターネット経由で、 20~49 歳の女性有職者及び専業主婦に対して行われたもので、有効回答数は1002人。年齢階層比は20代・30代・40代で均等割り当て。

病気は誰にとっても怖いもの。ましてや経年と共に発症可能性が増加するものとなれば、色々と備えたり、予防策を調べて努力をしたり、定期検診を受けて 早期発見を心がけることになる。今調査母体で「将来(自分が発症するかもしれないと)心配な病気」について複数回答で聞いた結果が次のグラフ。トップは「乳がん」で、過半数の人が心配をしている。

乳がん」は特に女性に多い「がん」で、女性が気にするのも当然といえる。第二位の「子宮がん」 も同様(というより、こちらは女性特有)。第三位の「更年期障害」も女性発症の場合が極めて多く、上位陣、そして過半数の人が気にしている病症はいずれも 「女性が発症しやすい病気」ということになる。もちろん発症リスクが高い病気に対し(通常レベルでの)心配をするのは、ごく普通の現象といえ、心配する行 為自身を気に病むことは無い。

全般に「がん」への懸念度は高めだが、「肺がん」の値が低めなのが気になる。しかしこれはあくまでも全体値での話。煙草を吸っているか否かで見ると、大きな違いが生じている。

喫煙者の「肺がん」への心配度は実に半数近く。これが卒煙者(以前喫煙していたが、今は禁煙している人)になると2割に減り、元々喫煙経験の無い人は1割強にまで減る。今回グラフ生成は略するが、全般的に喫煙者は「肺がん」以外にも「がん」全般への発症リスクを気にする人の割合が大きく、たばことがんの関係を多かれ少なかれ頭に想い浮かべていることが分かる。

余談ではあるが、現時点で最新の【厚生労働省による人口動態統計(確定数)の概況(2009年)】によれば、女性の死因トップは「悪性新生物」。実質的に「がん」がついており、次いで「心疾患」となっている。

【日本人の「3人に2人が『がん』になる」「2人に1人が『がん』で亡くなる」・がんの2015年問題とは】という話もある。正しい知識を持った上で、正しく恐れ、備え、予防策をこなしていくべきだろう。

2011年6月29日 サーチナ