2011年4月27日水曜日

白血病リンパ腫の新薬

成人T細胞白血病リンパ腫の治療剤「KW-0761」の国内医薬品製造販売承認を申請

協和発酵キリン株式会社は、2011年4月26日に成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)(注1)を適応症として開発中のKW-0761の国内医薬品製造販売承認を厚生労働省に申請した。

KW-0761は独自の強活性抗体作製技術「POTELLIGENT(R)(ポテリジェント)」を応用したヒト化モノクローナル抗体。化学療法奏効後に再発又は再燃したCCR4陽性成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)を対象としている医薬品製造販売承認申請をする抗体で、ポテリジェント抗体としては、世界で初めての医薬品製造販売承認申請となった。

国内で実施した臨床試験の結果を踏まえ、製造販売承認申請に至ったKW-076は厚生労働省よりCCR4陽性のATLを対象疾病とした希少疾病用医薬品の指定を受けている。

2011年4月23日土曜日

手術不能乳がん・転移乳がんへ新薬

新規抗がん剤ハラヴェンが承認取得- エーザイ

エーザイは4月22日、新規作用機序の抗がん剤ハラヴェン静注が「手術不能又は再発乳がん」の効能・効果で製造販売承認を取得したと発表した。既に欧米などで承認されており、エーザイは3月に発表した中期戦略計画で、ハラヴェンの2015年以降の全世界売上高目標を20億ドルとしている。

欧米を中心に行ったグローバルフェーズ3試験では、主要評価項目である全生存期間中央値がハラヴェン投与群では13.1か月となり、主治医選択治療群の10.6か月に対し、2.5か月間延長したという。
ハラヴェン投与群で高頻度(頻度25%以上)で認められた有害事象は、無気力(疲労感)、好中球減少、貧血、脱毛症、末梢神経障害(無感覚、手足などのしびれ)、吐き気、便秘だった。このうち、特に重篤な有害事象として報告されたのは好中球減少(発熱を伴う症例が4%、発熱を伴わない症例が2%)。投与中止に至った主な有害事象は末梢神経障害(5%)だった。

通常、成人には、1 日1 回1.4 mg/平方メートル(体表面積)を2-5 分間かけて、週1 回、静脈内投与する。これを2 週連続で行い、3 週目は休薬する。これを1 サイクルとして、投与を繰り返す。患者の状態により適宜減量する。

2011年4月22日 キャリアブレイン


エーザイ、生存延長の治験結果を持つ乳がん治療薬の承認取得

エーザイは22日、乳がん治療の抗がん剤「ハラヴェン」の日本での製造販売承認を取得したと発表した。臨床試験(治験)でハラヴェンを投与した乳がん患者は、他の抗がん剤などで治療した患者と比べ、生存期間が約3カ月長かった。薬価(医薬品の公定価格)が決まり次第、発売する。

ハラヴェン投与患者の生存期間の中央値は13.2カ月で、他の治療法では10.5カ月だった。エーザイは欧米でも承認を得ており、各国で順次発売する。2015年までに10億ドル(約820億円)の世界売上高を目指す。

2011年4月22日 日本経済新聞

2011年4月22日金曜日

乳がんの新検査法

乳がん診断に「新兵器」 高い発見能力の「PEM」

米国で普及し始めた新しい乳がん検査法「陽電子放射乳房撮影(PEM)」をご存じだろうか。乳房のがん細胞発見を目的に開発された検査方法で、通常の検診に使われているマンモグラフィーなどより、明確に患部の大きさや位置を捉えると期待が集まっている。(日野稚子)

 ■「全身病」と考える

「30~64歳女性のがん死亡原因第1位は乳がん。 増加傾向は止められない状況だからこそ、自分の命を守るため検診を考えて」と話すのは、聖マリアンナ医科大学ブレスト&イメージングセンター(ブレストセ ンター)の福田護院長だ。「ピンクリボン運動」を推進するなど乳がん啓発活動を行う「NPO法人乳房健康研究会」の創設メンバーで、乳がん治療の専門家 だ。

乳がん治療は変わってきた。「昔のように乳房単独ではなく全身病と考える。がん細胞の性質に合わせ、患部切除前後で抗がん剤や女性ホルモンの投与、放射線照射などを行うし、乳房温存手術ができる場合もある」(福田院長)。乳がんは、乳腺にある「乳管」内側にできた非浸潤がんと、乳管から外に出た浸潤がんに大別する。浸潤がんは転移可能性が高いが、2センチ以下でリンパ節転移前の「早期がん」の段階で治療を始めれば再発率は低くなる。非浸潤がんは、しこりができるともかぎらない。

 ■痛みなく高精度

がん細胞を撮影する「陽電子放射断層撮影(PET)」検査は、がん細胞が正常細胞よりも多く取り込む放射性検査薬を体内に注入し、放射線発生部位を撮影する。このPET原理を応用し、乳房専用に開発されたのがPEMだ。

「PET検査は全身撮影で空間分解能が5ミリなので、乳がん細胞はぼんやりとしか撮れない。PEMでは、放射線検出器を胸に当てて撮像するので、明瞭かつ撮影範囲も広い画像になる」と解説するのは、日本初のPEM機器導入施設で、医療法人社団ゆうあい会「ゆうあいクリニック」(横浜市)の片山敦理事長。

乳房の画像診断はX線撮影の「マンモグラフィー」と「超音波診断装置(エコー)」が主流だ。マンモグラフィーは乳房を押し潰すため激痛を伴う場合が多い。乳腺組織と乳がんのしこり両方が白く写り、がん確定診断や若い女性では不向きな面もある。エコー検査は痛みはないが、石灰化病変は不得手という。「右乳房のがんが疑われ、細胞診や切開しての病理検査も陰性だった40代女性をPEMで調べたら、両側乳房にがんがあった。検査を何度受けても偽陽性と偽陰性を行き来する“検査難民”は多い」(片山理事長)

同クリニックでは5月から、一般からもPEM検査の予約を受け付ける。実際にPEM検査を受けてみた。撮影は片側につき上下・左右2方向で約40分ほどだが、マンモグラフィーで感じる痛みがない分、気が楽だった。


同クリニックは聖マリアンナ医大、昭和大学などとPEM診断の臨床研究中で、がん患者をメーンに4月中旬までに撮影を20例行った。ブレストセンターの福田院長は「診断精度を検証中だが、非常に小さいサイズでの発見能力があるといえるだろう。非浸潤がんも見つかり驚いている。従来の画像診断では難しかったり、精密診断を要する事例では有効かもしれない」と話している。

2011年4月22日 産経新聞

C型肝炎のがんゲノム解析

HCV由来肝癌全ゲノムを世界で初めて解読‐診断・治療の分子候補を同定

C型肝炎ウイルス(HCV)感染を原因とする肝癌の全ゲノムを、国立がん研究センターと東京大学先端科学技術研究センターのグループが、世界で初めて解 読した。HCV肝癌の全ゲノム解析から、癌抑制遺伝子の変異など、多数の遺伝子異常が起きていることが分かったことで、今後、新たな診断・治療につながる ことが期待される。研究は、癌の遺伝子異常についてのカタログ作りに取り組んでいる「国際がんゲノムコンソーシアム」の一環として行われたもので、英国の乳癌解析に次ぐ2番目の報告になる。

今回、詳細な解析ができたのは、70代男性患者1人。解析では、63個のアミノ酸置換を引き起こす遺伝子変異と、4個の融合遺伝子を含めた、肝臓癌で起 こっているゲノム異常の全体像を明らかになっている。また、HCV肝癌で特徴的な遺伝子変異パターンのほか、ごく一部の細胞でだけ癌抑制遺伝子の変異が 見られるなど、肝癌の複雑さも明らかになっている。
C型肝炎から肝癌発生に至るまでには20~30年の経過があり、いつ、どこで、どのように癌のゲノム変異が起きているか、また各種のゲノム変異に共通パ ターンがあるかどうかなどが分かれば、新たな診断・治療法の開発につながる。国立がん研究センターの嘉山孝正理事長は、HCV肝癌のゲノム全体像が解読さ れたことで、「ゲノム解析情報に基づく癌個別化医療の実現へ大きく近づいた」としている。
ただ、これまでもHCV肝癌については、いろいろなタイプが混在していることが想定されており、今回の1患者だけの解析では、HCV肝癌のゲノム変異全体像を映し出しているとはいえないため、研究グループでは今後、さらに症例を増やして、解析を進めることにしている。
2011年4月21日 薬事日報