2011年4月22日金曜日

乳がんの新検査法

乳がん診断に「新兵器」 高い発見能力の「PEM」

米国で普及し始めた新しい乳がん検査法「陽電子放射乳房撮影(PEM)」をご存じだろうか。乳房のがん細胞発見を目的に開発された検査方法で、通常の検診に使われているマンモグラフィーなどより、明確に患部の大きさや位置を捉えると期待が集まっている。(日野稚子)

 ■「全身病」と考える

「30~64歳女性のがん死亡原因第1位は乳がん。 増加傾向は止められない状況だからこそ、自分の命を守るため検診を考えて」と話すのは、聖マリアンナ医科大学ブレスト&イメージングセンター(ブレストセ ンター)の福田護院長だ。「ピンクリボン運動」を推進するなど乳がん啓発活動を行う「NPO法人乳房健康研究会」の創設メンバーで、乳がん治療の専門家 だ。

乳がん治療は変わってきた。「昔のように乳房単独ではなく全身病と考える。がん細胞の性質に合わせ、患部切除前後で抗がん剤や女性ホルモンの投与、放射線照射などを行うし、乳房温存手術ができる場合もある」(福田院長)。乳がんは、乳腺にある「乳管」内側にできた非浸潤がんと、乳管から外に出た浸潤がんに大別する。浸潤がんは転移可能性が高いが、2センチ以下でリンパ節転移前の「早期がん」の段階で治療を始めれば再発率は低くなる。非浸潤がんは、しこりができるともかぎらない。

 ■痛みなく高精度

がん細胞を撮影する「陽電子放射断層撮影(PET)」検査は、がん細胞が正常細胞よりも多く取り込む放射性検査薬を体内に注入し、放射線発生部位を撮影する。このPET原理を応用し、乳房専用に開発されたのがPEMだ。

「PET検査は全身撮影で空間分解能が5ミリなので、乳がん細胞はぼんやりとしか撮れない。PEMでは、放射線検出器を胸に当てて撮像するので、明瞭かつ撮影範囲も広い画像になる」と解説するのは、日本初のPEM機器導入施設で、医療法人社団ゆうあい会「ゆうあいクリニック」(横浜市)の片山敦理事長。

乳房の画像診断はX線撮影の「マンモグラフィー」と「超音波診断装置(エコー)」が主流だ。マンモグラフィーは乳房を押し潰すため激痛を伴う場合が多い。乳腺組織と乳がんのしこり両方が白く写り、がん確定診断や若い女性では不向きな面もある。エコー検査は痛みはないが、石灰化病変は不得手という。「右乳房のがんが疑われ、細胞診や切開しての病理検査も陰性だった40代女性をPEMで調べたら、両側乳房にがんがあった。検査を何度受けても偽陽性と偽陰性を行き来する“検査難民”は多い」(片山理事長)

同クリニックでは5月から、一般からもPEM検査の予約を受け付ける。実際にPEM検査を受けてみた。撮影は片側につき上下・左右2方向で約40分ほどだが、マンモグラフィーで感じる痛みがない分、気が楽だった。


同クリニックは聖マリアンナ医大、昭和大学などとPEM診断の臨床研究中で、がん患者をメーンに4月中旬までに撮影を20例行った。ブレストセンターの福田院長は「診断精度を検証中だが、非常に小さいサイズでの発見能力があるといえるだろう。非浸潤がんも見つかり驚いている。従来の画像診断では難しかったり、精密診断を要する事例では有効かもしれない」と話している。

2011年4月22日 産経新聞